旅から何を得ますか?
「待つほかないね」最近の宿屋仲間の間では、このつぶやきが常套句となっています・・・コロナの影響が出始めたころは、オンライン〇〇などみんな一生懸命やって、それなりの手ごたえや成果はありました。ただ、必要最低限の売上からは程遠く、人々の新鮮味も落ちてきてしまって、結果このつぶやきになっています。
色々な業種の名経営者が、この危機に際して「原点から見直す」という発言をされています。コロナ前から少しずつ変調をきたしていた不具合が、一気に露呈しているようです。
ゲストハウスで言うと、オリンピック目当ての過剰供給により、ビジネスホテルなどを含めた価格競争になっていた上に、ゲストハウスに求められることも変化していたと思います。
あっ!暗い話をするのが今日の目的ではありません。
次への一歩は、原点から
求められるものが変化しているのであれば、もう一度原点に立ち返り考えてみようと思い、「旅とは?」「なぜ旅をするのか?」を問い直しています。
皆さんは、なぜ旅をしますか?
先日訪れたゲストは、
・語彙が広がって、自分にとってバランスのいい生活ができる
(仕事ではいつも集中しているので、世間を広げ休息をとることでバランスが取れる)
・頭の中を整理するため
と非常にポジティブな旅をしていました。旅の中で見たり触れたり味わったりしながら、自分を広げることができると言っていました。
う~ん・・・「旅とは何か?」を問い直すために出掛けてみましょう。
日本人はやっぱり温泉だね
秋田の乳頭温泉郷、黒湯温泉へ。ととと のタクジさんから紹介してもらい行って来たのですが、それはそれはゆっくりできます。昔ながらの湯治宿のなごりも残っており、自炊できる棟があります。もちろん2食付きのプラン(別棟)もあります。
源泉が目の前でボコボコ湧いていて、地獄谷のようです。

自然の中でゆっくりと過ごすことで、非日常を味わい、ストレスを解消して英気を養う。これは旅をする大きな目的の一つだということを実感しました。
ホント温泉はいいわ。
人との出会いが幅を広げる
盛岡で宿泊した ととと のとなりでヴィンテージリメイクの服や雑貨のショップが開店したというので、宿主のタクジさんと訪れてみました。名前は、NORA-ADD。
バッグなどを製造して販売しているのですが、使っている生地がすごい。江戸時代のものでしょうか?ボロボロになった着物地を幾重にも縫い合わせてあります。刺し子のような上品なものでもなく、生活の中で使われていたものが、今でも残っていたそうです。
それを再度利用して、バッグなどに仕立て直してあります。
私が小学生のころ、使い捨てライターが世に出たときは、大人たちが「もったいないなぁ」と言っていたのが久しいです。

盛岡では他にも藍染めデザイナー(佐々木龍大さん)から、藍建てをしてから2年も染色に使っている藍釜を見せてもらい、自然と対話をしながらのモノづくりに感心したり、朝市のお母さんたちに元気を分けてもらったりと、日常の中の非日常を味わうことができました。
「時間」を意識する
東北の帰り道に、鎌倉材木座にある築約100年の古民家を改装した、亀時間に宿泊。
大きな大黒柱と、立派な神棚が旅人を迎えてくれます。私たちが、感動を覚えたのは、手作りのゴミ箱。古い棚に廃材の扉を付けたものが、雰囲気を損なわず機能を果たしています。
宿主のマサさんとは、コロナ禍における情報交換から話が始まります。リアルで集うことができず、沈滞気味な状況を共有できただけでも、少し気分が晴れました。
亀時間は、ミヒャエル・エンデのモモのお話しから名づけられています。経済思想家でもあったエンデは、お金に縛られる生き方を時間に置き換えてモモを書いたと言われています。
欲望があふれている現代の資本主義を斜めに考えながら、マサさんとの取り留めのない話が、我々にはかけがえのない時間でした。
とくに、梅酒や醤油など発酵食品を見ながら「時間に仕事をさせている」のくだりには、同じように発酵食品を作っている女将も意気投合でした。

旅の仕方が少しずつ変化していくかも
20年くらい前と比較すると飛行機料金も安くなり、スマホがあれば自分の位置が一目瞭然で、目的地も案内してくれる時代です。旅がしやすくなっていますよね。
事前に情報を取っておけば、風景もお店もネットで見た通り。冒険的な要素は削がれてしまい、確認作業のようになりかねません。
今回は、北上川をさかのぼること以外何も決めずに出かけました。現地で情報を集めて、のんびりゆっくりして、人と出会い、気づきを得た旅でした。
その場で学び、気づき、考える。そんな旅が面白くなりそうな気配がします。
皆さんはどうですか?
MADOオーナー
大島