有松絞で見える化

「儲かるからサスティナブルって言うのかなぁ?」

先日、とある会合で「サスティナブルが必要ですよ」の一言からふと考えてみた。


私がアパレルの仕事をしていた5~6年ほど前までは、環境に配慮すると儲からないって大手商社は言っていた。環境意識の高い会社はごく少数あったが、例えばオーガニックコットンなども、全体比で5%だけオーガニックを入るなど、コストとのせめぎあいで、なんちゃって環境意識的なものも多かった気がする。


それが、この1年ほどの様変わりは目を見張るものがある。ファッション業界も国連から、世界で第2位の汚染産業とみなされてサスティナブルを言わないと売れない、儲けにつながらない時代になったのだなぁと思う。


理由はどうであれ、環境を意識する社会へ向かうことは賛成だが、何が悪いのかなかなか理解できないことが多いと感じている。

国連によると1本のジーンズの生産には、7500リットル(平均的な人が7年かけて飲む水の量に相当)が必要と言っているが、どの工程でそれほどの水を使っているのか? よく理解できなかったのでググってみると、◯◯クロのサイトで、デニムにダメージ加工を施すときに大量の水を使っていたとの記載があり、「あー 確かに……」となった。以前加工場を見たことがあったからその大量の水の使用が理解できた。


そんな塩梅で、見たものは理解できるが、見ていないものは理解できない、信じられないのは私だけだろうか?


周りを見渡すと、中身や仕組みが見えないまま利用しているものが本当に多い。コンピューターの仕組みもよくわからないのに、AIって信じられますか? オーガニックコットンも本当に原料のトレーサビリティーが取れているの? 

便利なので何気なく利用しているし、それによって生活は豊かになっているから「それでいいのだ」とバカボンのパパのように呟きたいところであるが、見えないものを信じることができるかと言われるとどうも自信がない。


ゲストハウスを営み始めてからは、米の栽培を手伝ったり、お酒を造ったり、カフェでは自家製の味噌や醤油を使ったり、竹を切って灯りにしたり、いろいろ作ることを楽しみながら生活をしてきたが、それは見えないモノから、見えるモノへの回帰だったのであろうか……?


無肥料無農薬のお米を生酛造りで仕込んだオリジナルの日本酒

そうだ! 見えるモノから考えることにしよう。


見えるモノを一緒に作っていくと、わかってくることがたくさんある。例えばオーガニック野菜。無農薬栽培農家さんと話をしていると、非常に面白い。

「有機だから、安心安全でしょ?」と言うと

「うちの野菜は有機とは言えないんです。なぜなら有機JAS認証を受けてないから」


「そうなんだ。だったらJAS認証を受けた有機野菜ならば安心安全なんだ」と切り返すと

「それも一概に言えないのです。有機JASにおいて使用可能な農薬があるのでスーパーで売っている有機野菜が無農薬とは言えないし、有機肥料だから良くて、化学肥料だから悪いという短絡的な問題でもない。使用量の方が問題となることもあるので」


ムム…… なんだかよくわからない。けど、農家さんと知り合ったことや畑に行ったことがきっかけで、徐々に見えるようになっていく。わかり始めるわけだ。


調べてみると、日本農林規格には、有機農産物は、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減することと、採取場の生態系の維持に支障を生じない方法で採取することとある。

つまり有機野菜は、サスティナブルであるが、他の野菜と比較して体にいいとは言っていないのである。有機野菜は体にいいと単純に思っていた私にとっては驚きであった。

見えてくることによってわかることは、他にもたくさんあるはず。


女将は家庭菜園をしています。無農薬ですよ。

そこで、身近なことから始めてみることにしてみた。


ここでいきなり初心に帰り、なぜアパレルの仕事をやめたのか? から問い直すと、限界を感じた大量生産が頭に浮かぶ。国をまたいで加工賃の安い場所を探し、環境に負荷をかけ、とにかくコストを重視して大量生産した後は大量廃棄へ。

そのサイクルのど真ん中に居て夢が無くなってしまったから、地元に戻ってゲストハウスを営んできたのだ。


地元の有松には大量生産とは真逆の手作りの伝統工芸がある。

手工芸であるために、高度に機械化されたり、生産がグローバルで行われていたりしないので作るところを見ることができるし、見ればわかる。

何が良くて、何が悪いのか見てわかれば、持続可能な社会に向けて考えることができるし、信じることもできると思える。


有松絞で使う素材は、綿生地が主。前職のアパレル経験を活かせば、糸の成り立ちから生地作り、染色、縫製に至るまで、ゲストと一緒に楽しむことができそうである。

有松では、通常見ることができない生産現場を案内しながら、その成り立ちに至るまで意味と必要性を考えながら一緒に行動できる。

一緒に手作りすることができれば、大量廃棄を生むこともない。大量生産で失った夢も取り戻すことができるかもしれない。


サスティナブルの種は、見てわかることから始まると思う。高度にシステム化された現代では、すべてのことを見ることは不可能だが、小さなことから見える化を始める意識があれば、なぜそれが必要で、どのように行動すれば地球環境は徐々に良くなっていくのか? が理解できるのではないだろうか。


さて、MADOに来てくれたゲストと絞り染めなどしながら、エコバッグでも作ってみよう。


女将特性、有松絞を利用したエコバッグ 皆さんも一緒に作りませんか?

ゲストハウスMADO オーナー

大島

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